2015年08月03日
再稼働の川内原発に残る疑問 「合格=安全ではない」と規制委員長も明言
再稼働の川内原発に残る疑問 「合格=安全ではない」と規制委員長も明言

鹿児島の川内原発について、週刊東洋経済」2015年7月25日号<21日発売>「核心リポート03」からご紹介します。
7月10日、鹿児島県にある川内(せんだい)原発1号機の原子炉に、九州電力が核燃料を搬入し終えた。
使用前検査が順調に進めば、8月中旬に制御棒を引き抜いて原子炉を起動する。
2013年7月に策定された新規制基準の下では、「全国初の再稼働」となる。
九電は同2号機も9月下旬の起動を目指す。
両基で月間150億円程度の収益改善効果を見込み、5期ぶりの黒字化にも期待を寄せている。
■ 現在、合格は5基
2012年9月に発足した原子力規制委員会にとっても、川内原発は、新基準で最初に審査を終了した原発だ。
田中俊一委員長は、「新基準は以前より要求レベルが高いので、事業者も四苦八苦しており、ずいぶん時間がかかった」としつつ、今後は経験の蓄積により短縮できると語る。
規制委の新規制基準適合性審査は三つの段階に分かれている。
原子炉の基本設計を審査する「原子炉設置変更許可」と、詳細設計を審査する「工事計画認可」、運転管理について審査する「保安規定変更認可」である
。最も重視されるのが原子炉設置変更許可で、これを得れば“実質合格”と見なされる。
現状、実質合格となったのは川内原発と関西電力の高浜原発3、4号機、そして7月15日に許可された四国電力の伊方原発3号機だ。
伊方は残りの認可手続きなどを経て、早ければ今年度中に再稼働する可能性がある。
一方、高浜3、4号機は福井地方裁判所で運転差し止めの仮処分を受け、関電が想定していた今年11月の再稼働は困難になった。
ほかの審査中原発の再稼働は、あっても2016年度以降の見込みだ。
ただ、審査過程では、多くの疑問点も浮かび上がった。
肝心の安全性について規制委は「セシウム137の放出量が(福島事故の100分の1に当たる)100兆ベクレルを超えるような事故の発生頻度を、1原子炉当たり100万年に1回以下にするという安全目標を、川内原発は十分満たしている」と強調する。
しかし、この安全目標は、テロ攻撃などのケースを除いている。
そもそも、新規制基準として、定められたものでもない。これを安全性判断の根拠といえるのか。
田中委員長は「川内原発は新規制基準に適合したもので、安全と認めたわけではない」と断言する。
これは「原発にリスクゼロはない。安全と言えば、新たな安全神話につながる」という限界を示すと同時に、福島事故を踏まえた自戒でもある。
■新基準そのものも疑問あり
「世界で最も厳しいレベル」(規制委)という新規制基準に関しても疑問が残る。
たとえば、火山に囲まれている川内原発の審査で、焦点とされた火山影響評価。
規制委は原発に影響を及ぼす巨大噴火の可能性は十分に小さく、監視によって噴火の前兆も把握できると結論づけた。
だが、たとえ前兆をつかめたとしても、噴火時期も規模もわからないというのが学界の専門家の見方だ。
審査では火山の専門家は一人も意見を聞かれていない。
規制委審査は科学的といえず、審査基準の火山影響評価ガイドの見直しを求める声も強い。
また、自治体が策定する防災避難計画は、審査の対象になっていない。
米国では、連邦緊急事態管理庁(FEMA)という専門機関が避難計画の実効性を審査し、同国の原子力規制委員会もプロセスに深く関与している。
2014年に規制委委員を退任した大島賢三氏は、「日本版FEMAのような組織を作り、プロが関与することが必要。今やっても遅くない」と提言したが、いまだ実現の動きはない。
田中委員長自身、かねて「規制基準と防災は車の両輪」と強調してきた。
ただ、現在の法体系上、避難計画の実効性を評価する立場にない、と繰り返している。
それでも新規制基準は世界最高レベルと訴えるのは妥当なのか。
■ いまだ再稼働反対が過半数
地元合意の対象を都道府県と立地市町村に限定している現状など、再稼働に至る過程についてはほかにも問題点が指摘されている。
だが、今の自民党政権に、見直しに取り組む姿勢は見受けられない。
それどころか今春の電源構成の議論のように、原発依存度を高めに維持するため、規制委自身がまだ一基も許可していない老朽原発の運転延長を、長期目標に織り込む始末だ。
これでは世論で再稼働反対が過半を占める現状も仕方ない。
原発は安全性の追求が大前提ということを、あらためて問う必要がある
(「週刊東洋経済」2015年7月25日号<21日発売>「核心リポート03」を転載

鹿児島の川内原発について、週刊東洋経済」2015年7月25日号<21日発売>「核心リポート03」からご紹介します。
7月10日、鹿児島県にある川内(せんだい)原発1号機の原子炉に、九州電力が核燃料を搬入し終えた。
使用前検査が順調に進めば、8月中旬に制御棒を引き抜いて原子炉を起動する。
2013年7月に策定された新規制基準の下では、「全国初の再稼働」となる。
九電は同2号機も9月下旬の起動を目指す。
両基で月間150億円程度の収益改善効果を見込み、5期ぶりの黒字化にも期待を寄せている。
■ 現在、合格は5基
2012年9月に発足した原子力規制委員会にとっても、川内原発は、新基準で最初に審査を終了した原発だ。
田中俊一委員長は、「新基準は以前より要求レベルが高いので、事業者も四苦八苦しており、ずいぶん時間がかかった」としつつ、今後は経験の蓄積により短縮できると語る。
規制委の新規制基準適合性審査は三つの段階に分かれている。
原子炉の基本設計を審査する「原子炉設置変更許可」と、詳細設計を審査する「工事計画認可」、運転管理について審査する「保安規定変更認可」である
。最も重視されるのが原子炉設置変更許可で、これを得れば“実質合格”と見なされる。
現状、実質合格となったのは川内原発と関西電力の高浜原発3、4号機、そして7月15日に許可された四国電力の伊方原発3号機だ。
伊方は残りの認可手続きなどを経て、早ければ今年度中に再稼働する可能性がある。
一方、高浜3、4号機は福井地方裁判所で運転差し止めの仮処分を受け、関電が想定していた今年11月の再稼働は困難になった。
ほかの審査中原発の再稼働は、あっても2016年度以降の見込みだ。
ただ、審査過程では、多くの疑問点も浮かび上がった。
肝心の安全性について規制委は「セシウム137の放出量が(福島事故の100分の1に当たる)100兆ベクレルを超えるような事故の発生頻度を、1原子炉当たり100万年に1回以下にするという安全目標を、川内原発は十分満たしている」と強調する。
しかし、この安全目標は、テロ攻撃などのケースを除いている。
そもそも、新規制基準として、定められたものでもない。これを安全性判断の根拠といえるのか。
田中委員長は「川内原発は新規制基準に適合したもので、安全と認めたわけではない」と断言する。
これは「原発にリスクゼロはない。安全と言えば、新たな安全神話につながる」という限界を示すと同時に、福島事故を踏まえた自戒でもある。
■新基準そのものも疑問あり
「世界で最も厳しいレベル」(規制委)という新規制基準に関しても疑問が残る。
たとえば、火山に囲まれている川内原発の審査で、焦点とされた火山影響評価。
規制委は原発に影響を及ぼす巨大噴火の可能性は十分に小さく、監視によって噴火の前兆も把握できると結論づけた。
だが、たとえ前兆をつかめたとしても、噴火時期も規模もわからないというのが学界の専門家の見方だ。
審査では火山の専門家は一人も意見を聞かれていない。
規制委審査は科学的といえず、審査基準の火山影響評価ガイドの見直しを求める声も強い。
また、自治体が策定する防災避難計画は、審査の対象になっていない。
米国では、連邦緊急事態管理庁(FEMA)という専門機関が避難計画の実効性を審査し、同国の原子力規制委員会もプロセスに深く関与している。
2014年に規制委委員を退任した大島賢三氏は、「日本版FEMAのような組織を作り、プロが関与することが必要。今やっても遅くない」と提言したが、いまだ実現の動きはない。
田中委員長自身、かねて「規制基準と防災は車の両輪」と強調してきた。
ただ、現在の法体系上、避難計画の実効性を評価する立場にない、と繰り返している。
それでも新規制基準は世界最高レベルと訴えるのは妥当なのか。
■ いまだ再稼働反対が過半数
地元合意の対象を都道府県と立地市町村に限定している現状など、再稼働に至る過程についてはほかにも問題点が指摘されている。
だが、今の自民党政権に、見直しに取り組む姿勢は見受けられない。
それどころか今春の電源構成の議論のように、原発依存度を高めに維持するため、規制委自身がまだ一基も許可していない老朽原発の運転延長を、長期目標に織り込む始末だ。
これでは世論で再稼働反対が過半を占める現状も仕方ない。
原発は安全性の追求が大前提ということを、あらためて問う必要がある
(「週刊東洋経済」2015年7月25日号<21日発売>「核心リポート03」を転載
Posted by 瀬戸 武志 at 09:38│Comments(0)
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