川内原発、不安をいかに解消するか

瀬戸 武志

2016年06月21日 02:55




【鹿児島の課題】川内原発、不安をいかに解消するか

=2016/06/14付 西日本新聞朝刊=より

任期満了に伴う鹿児島県知事選が23日告示される。
少子高齢化で人口減少が進み、地域社会の活力が低下する中、県政には待ったなしの課題が少なくない。
原発や災害への対応に加え、観光や農業を中心とした地域振興策、弱者を支える施策も重要だ。
それぞれの現場を記者が歩き、課題の処方箋を探った。

熊本地震発生から1カ月を翌日に控えた5月13日。
鹿児島市の県庁前では怒りと不安が渦巻いた。
「地震が収まるまで原発を停止すべきだ」「地震への対応や避難計画が不十分なままじゃないか」。
反原発団体メンバーの声が鳴り響いた。

全国の原発で唯一稼働中の九州電力川内原発(同県薩摩川内市)。
隣県での大地震を受け、市民団体などは即時停止を求めるが、県は、原子力規制委員会の「科学的、技術的見地から停止する必要はない」との見解に同調するだけだ。

川内原発の地元は不安の声が根強い。
5歳の双子を育てる福祉施設職員の女性(34)の自宅は原発から約15キロ。
現在の避難計画では事故時にはまず「屋内退避」となっている。
しかし、熊本地震では余震を恐れ屋外避難を選ぶ被災者があふれた。
女性は「家にとどまれないのに、外は放射能の恐怖。こんな計画でいいのか」と心配でならない。

6月3日の県議会。県幹部は避難計画の実効性を問う質問に答えた。
「事前に全ての事故、災害は想定できない。その時その時の判断で対応するしかない」

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2015年8月、全国の原発のトップを切り再稼働した川内原発。
原発の新規制基準をクリアした14年9月から、再稼働の条件とされた知事の地元同意まで、2カ月で進んだ。
その間に県は、事故時における国の責任を明示し、住民説明会の開催、経済産業相の来県-と手順を踏み、国と歩調を合わせた。

ただ、その手法は強引、拙速ともとられた。
県は同意が必要な自治体は「県と薩摩川内市で十分」とし、同意への参画を求めた原発周辺2市議会の意見書を退けた。
15年4月の県議選で原発問題の争点化を避けるため同意時期を早めた。
同意直後の14年12月に本紙が実施した県内世論調査では55%の県民が再稼働には反対だった。

現在の避難計画を試した昨年12月の県原子力防災訓練。
参加者へのアンケートで、実際の事故時に「避難できる」と答えたのは半数にとどまった。

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川内原発1号機は10月にも定期検査で停止する。
2~3カ月後に再び動きだすが、14年の際のような地元同意の手続きはない。
定検で国の審査に合格すれば稼働するサイクルに、県が関与するすべはないのか。

九電と県が結ぶ安全協定は、県の立ち入り調査権を規定する。
近年は年5件前後調査に入っているが、トラブルの原因調査はほとんどない。
「県として九電に何かを言う技術的な知見はない」(県幹部)からだ。

 こうした鹿児島県の対応は原発立地県として十分なのだろうか。
例えば四国電力伊方原発がある愛媛県。
安全対策を規制委任せにせず、県独自の知見を持つため、有識者による専門部会を設置している。
担当者は「県民の安全を守るため県が知見を持つのは当然だ」と語る。
同様の組織は新潟県や福井県にもある。

鹿児島県の「第一人者の専門家を集めた規制委で厳格な審査をしており、必要ない」との立場に、愛媛県の専門部会委員の一人、九州大の渡辺英雄准教授(原子炉材料工学)は疑念を示す。
「鹿児島には火山が多く存在するように原発を巡る課題は地域により違う。
国の基準にこだわらず、県民目線で専門家が議論し、疑問を解消する役割は重要」と考えるからだ。

原発が巻き込まれる複合災害への対応にも県民の不安は拭えない。
これをいかに解消するのか-。県政には答えが求められている。



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